出かけるときには、だいたい目的地があります。
あそこへ行こう。
あれを見よう。
何時までには着こう。
ナビに目的地を入れて、あとはそこへ向かう。
なのに、しばらく経ってから思い出すのは、目的地とは関係のない景色だったりします。

途中にあったもの。
福岡県北九州市、門司港駅。
ホームを歩く人。
これからどこかへ向かう人もいれば、帰ってきた人もいる。
同じ場所にいても、たぶん目的地はみんな違います。
駅って、考えてみれば不思議な場所です。
ほとんどの人にとって、ここにいること自体が目的じゃない。
どこかへ行く途中に、少しだけ同じ場所にいる。
それだけです。

山口県宇部市、琴崎八幡宮。
夏になると、たくさんの風鈴が並びます。
風が吹くたびに音がして、また静かになる。
せっかく来たのだから、境内を見て、お参りして。
たぶん、それが正しい楽しみ方。
でも、ふと横を見ると。

カブトムシがいました。
……そっちも気になる(笑)
予定になかったものに足を止める。
出かけた日の記憶って、案外こういうものでできているのかもしれません。

ここがどこだったのか、分かりません。
写真は残っているのに、場所が思い出せない。
いつだったのか。
何をしに行ったのか。
前後に何をしていたのか。
そこまで曖昧なのに、この瞬間だけは残っている。
だったら、それでいいような気もします。

場所を記録するためだけなら、もっと分かりやすいものを残せばいい。
建物だったり、看板だったり。
でも実際に残っているのは、
誰かの仕草だったり、
足元だったり、
そのとき差していた光だったりする。
何年か経つと、そっちの方が妙に懐かしかったりします。

帰り道も、まだ途中。
福岡市、JR竹下駅。
もう暗くなった時間。
目的地で過ごした時間が終わって、あとは帰るだけ。
……のはずなんですが。
帰り道に見たものまで、その日の記憶に混ざっていきます。

行きと帰りで、同じ景色が違って見えることがあります。
たぶん変わったのは、景色の方じゃない。
その日一日ぶん、こちら側に何かが増えただけです。
目的地には、ちゃんと着いた。
見たかったものも見た。
それでも後になって思い出すのは、
ホームだったり、
風鈴の音だったり、
一匹のカブトムシだったり。
名前も分からない場所だったりする。
車で出かけた先には、車以外のものもあります。
だから、この場所ではたまに、
そんな話も残していこうと思います。
まあ、たまにはいいでしょう。
